私が、何度も同じレストランへ足を運ぶ理由

年に数回、ミシュランの二つ星や三つ星のお店へ伺うことがあります。
「料理の勉強ですか?」と聞かれることもありますが、実は少し違います。
一番の理由は、とてもシンプル。
美味しいものが食べたいから。
料理を仕事にしているからこそ勉強の意識が全くないと言えば嘘になりますが、
その場で「この調理法はどうなっているんだろう」「このソースは何を使っているんだろう」と
分析しながら食べているわけではありません。
その時間、その料理、その空間を、素直に楽しんでいます。



長く通っている二つ星のお店があります。
毎年伺っていますが、定番のアミューズと最後のお茶菓子は変わらない一方で、
その間のお料理はほとんど同じものに出会ったことがありません。
和のエッセンスや異国の食材を取り入れながらも、
軸にはクラシカルなフレンチがあり、お店らしさは決して変わらない。
だから毎回、
「今回はどんな料理に出会えるんだろう。」
そんな楽しみがあります。



一方で、三つ星のお店にはまた違う魅力があります。
なかなか予約が取れないからこそ、
「あの一皿はどんな体験なんだろう」「どんな世界観を見せてくれるんだろう」という期待があります。
料理だけではなく、サービスや空間も含めて、そのお店にしかない時間を味わいに行く感覚です。
振り返ってみると、私が好きなお店は、星の数だけでは決まっていません。
一度伺って、それ以来足が向かなかったお店もあります。
逆に、十年以上通い続けているお店もあります。
味はもちろんですが、お店全体の空気や、その場所で過ごす時間まで含めて、「また来たい」と思えること。
それが、私にとって一番大切なのかもしれません。
そして不思議なのは、その場では仕事のことを考えていないのに、しばらく経ってから、
「この組み合わせ、ケーキにも応用できるかもしれない。」
そんなふうに思う瞬間があることです。
無理に学ぼうとしているわけではありません。
美味しい体験を重ねているうちに、
気づけばその記憶が、自分の料理やお菓子作りの中に少しずつ溶け込んでいる。
料理は、技術だけではなく、体験もまた、自分を育ててくれるものなのだと感じています。
「また美味しいものを食べに行きたい。」
そんな気持ちでお店を予約しているだけなのですが、
振り返ると、その時間は少しずつ今の自分の料理にも繋がっているような気がします。

